和歌山県白浜町「円月島」のサンゴ群集 filmed2005 <吉野熊野国立公園田辺白浜海域公園地区>

サンゴ群集モニタリング調査風景<田辺白浜海域公園地区>

サンゴ群集モニタリング調査<田辺白浜海域公園地区>

 

2024年~2018年 <田辺白浜海域公園地区> 

本調査は環境省近畿地方環境事務所「マリンワーカー事業吉野熊野国立公園田辺湾周辺海域における造礁サンゴ群集保全に向けた調査等業務」並びに独自調査により実施。

 


🔲 田辺白浜海域のサンゴ生息状況 2024年

 

2018年から実施する沖島西・天神崎丸山・四双島・円月島の4地点の「サンゴ群集の詳細調査」結果の要旨を以下に記す。

🔲天神崎丸山

➢サンゴ被度は増加し、2016年当時の被度まで再生

 2016年度の天神崎丸山のサンゴ被度は37%であっが、台風による波浪等により、2017年度には30%まで減少した。 2018年低水温ショックではサンゴ群集の9割が白化したが、同年に白化は元の状態近くまで回復し28%になった。 沖島西・四双島・円月島のミドリイシ属は壊滅的被害を受け、生残するものは確認できないなか、天神崎丸山のサンゴ群集だけが生残できたのは、優占種であるエダミドリイシの低水温に対する耐性と考える。 その後、大型台風の波浪による砂泥の巻き上げや岩礁からのサンゴはく離、レイシ貝類による食害などのかく乱があったが、本年度には44%までに再生した。

➢死サンゴ被度の推移

 天神崎丸山の死サンゴ被度は、2018年度には冬季の低水温の長期化による白化死で2.8%、2020年はクチベニレイシガイダマシなどのレイシ貝類による食害で1.3%、2021年度はレイシ貝類による食害や台風の影響により0.7%、2022年度は夏季の白化死により0.15%、2023年度はレイシ貝類による食害により0.53%に増加、本年度は0.75%に増加した。

➢サンゴ再生時の阻害要因の減少

 この海域のサンゴ成長を拒む主な要因は、大型台風等の波浪による砂泥の巻き上げや岩礁からのサンゴはく離、レイシ貝類による食害、2018年低水温ショック(経験したことのない低水温の長期化)の3点。  本年度は大型台風の直撃による高波、極度の低水温や高水温による影響はなかった。 レイシ貝類による食害については、2021年度から実施するレイシ貝類の除去を計画的に実施できたことが、サンゴ被度の増加につながったと推測する。

➢稚サンゴの増加と群集の維持

 稚サンゴ増加の要因は、2023年度の台風等の波浪により、サンゴの枝が折れ、その折れたサンゴが近隣の転石上や砂上で成長を続けた無性生殖によるものが多い。さらに、この海域は入り江の奥まったところに位置し、有性生殖(産卵)が行われた際には、狭い湾内でバンドル(卵子と精子が入ったカプセル)が滞留し、自家生産率が高くなる。 今後、レイシ貝類による急激な食害の拡大や、超大型台風の波浪等による連続的かく乱等がない限り、サンゴ群集を維持すると評価する。

🔲 沖島西

➢サンゴ被度に明確な増加は確認できない

 2016年度のサンゴ被度は63%であったが、台風の波浪等により、2017年度には54%まで減少した。 2018年低水温ショックにより壊滅的被害を受け、ミドリイシ属のサンゴで生残するものは確認できなくなった。 本年度においてもサンゴ被度は1%程度であり、明確な増加は確認できない状況が続く。

➢稚サンゴの成長と新規加入の稚サンゴに期待

 サンゴ群集の再生に大きく寄与する成長の早いミドリイシ属は、2018年低水温ショック以降、2021年度の調査で初めて2個の稚サンゴ(クシハダミドリイシ長径5cmと4cm)を確認。 本年度は、この稚サンゴが成長し、20cmと15cmに成長した。成長スピードは3年間で15~11cm(5cm~4cm/年)。また、新規加入の稚サンゴで長径6cmを1群体を確認した。 ミドリイシ属稚サンゴの新規加入と成長にサンゴ群集再生に向け期待。

🔲円月島

➢サンゴ被度に明確な増加は確認できない

 2016年度のサンゴ被度は36%であったが、オニヒトデによる食害により、2017年度には18%まで減少した。2018年低水温ショックにより壊滅的被害を受け、ミドリイシ属のサンゴで生残するものは確認できなくなった。 同様にオニヒトデも確認できなくなった。 本年度においても、サンゴ被度は2%程度であり、明確な増加は確認できない状況が続く。

➢新たな稚サンゴを確認、再生に向け期待

 2018年低水温ショック以降、2021年度に初めてミドリイシ属 の稚サンゴ(サンゴ長径4cmのミドリイシ属)を確認。2022年度は長径8cm、成長スピードは1年間で4cm程度。2023年度はこのサンゴは確認できなかったが、新規加入の長径7cmの稚サンゴを確認。 本年度は昨年のミドリイシ属の稚サンゴは確認できなかったが、新たなミドリイシ属の稚サンゴ7cmを確認。 稚サンゴの新規加入に再生の期待はできるが、この海域はオニヒトデの危機的食害により、サンゴ群集が激減した過去があるため、サンゴの生息状況には、特に注意してモニタリングする必要がある。

🔲四双島

➢サンゴ被度に明確な増加は確認できない

 2016年度のサンゴ被度は16%、2017年度は15%であり、オニヒトデ除去の効果により横ばい状況となった。  2018年低水温ショックにより壊滅的被害を受け、ミドリイシ属のサンゴで生残するものは確認できなくなった。同様にオニヒトデも確認できなくなった。 本年度においても、サンゴ被度は1%未満であり、増加は確認できない。

➢稚サンゴは未確認

 2018年低水温ショック以降、2021年度に初めてミドリイシ属の稚サンゴで長径4cmを確認、2023年度には13cm、成長スピードは2年間で9cm。 本年度はミドリイシ属の稚サンゴは確認できない。

 


 

2019年から実施する沖島西・四双島・円月島の3地点の「サンゴ群集の再生状況調査」結果の要旨を以下に記す。特に稚サンゴ加入量の多寡は、サンゴ群集の回復に密接に関係し、群集回復の予測に重要な指標の一つ。 本調査では長径5cm未満の稚サンゴのほか、すべてのサイズのミドリイシ属サンゴを調査対象とし、再生状況を評価した。

 

🔲 田辺白浜海域のサンゴ群集の再生状況 2024年

   


🔲 田辺白浜海域のサンゴ群集の再生状況まとめ 2019年~2024年

 

■サンゴ加入と成長

➢2018年低水温ショックの翌年から2024年の6年間の調査結果の要約
・2019年度にはミドリイシ属の新規加入を確認。出現数(Num.)19群体、平均サイズ(Avg.)5.2cm、中央値(Mdn.)5cm、最頻値(Mo.)4cm。この結果より、2018年に本調査海域以外でのサンゴ産卵に伴うプラヌラ幼生が本海域に流れつき、固着し成長したものと断定。固着時期は沖縄や串本等各地の産卵期である2018年の5月から8月と推測し、調査日の19年10月まではおよそ1年。新規加入したミドリイシ属のサンゴは、1年間で4cm(最頻値)から5cm(平均サイズ)成長。サンゴの成長スピードは、サンゴ種や生育環境等により大きく異なるが、これらサンゴは2018年以前のかつての優良な大サンゴ群集であった時の優占4種(クシハダミドリイシ・エンタクミドリイシ・ミドリイシ・ニホンミドリイシ)であった。
・2020年度は、出現数は94群体、平均サイズ5.9cm、中央値、最頻値同じく5cm。
・2021年度は、出現数は199群体、平均サイズ8.3cm、中央値7cm、最頻値10cm

・2023年度は、出現数は284群体、平均サイズ13.8cm、中央値13cm、最頻値9cm
・2024年度は、出現数は193群体、平均サイズ16cm、中央値14cm、最頻値14cm

➢ミドリイシ属サンゴは毎年新規加入し、本海域で成長
・2018年低水温ショックの年より、毎年新規加入する稚サンゴが出現し、かつサンゴの各サイズである、長径・平均値・中央値・最頻値・最大サイズからサンゴは成長(再生)していると評価する。

➢2024年度の出現数減少要因は調査地点の地域差
・出現数の推移をみると、2023年度の284群体から、2024年度は193群体に減少(32%減)した。沖島西の調査地点は、2023年度の調査(160群体)から約250m北の沖島の島影に入った地点(調査前から少ないと予想した地点)で93群体(42%減少)となった。四双島は2023年度の調査(70群体)から100m南方向への調査(同様に少ないと予想した地点)で49群体(30%減少)、円月島は2023年度の調査(54群体)から西へ100mの調査(2023年度の同様と予想)で51群体(6%減少)となった。これらより、2023年度と2024年度の調査地点の地域的な差と推測する。

■稚サンゴ加入多寡とサンゴ群集の再生状況 

➢新規加入の多かった年は2019年と2020年

 稚サンゴ調査より新規加入年予想は2019年に24個、2020年33個と多いが、以外の年は半数以下と少ない。その要因としては、本海域以南のサンゴ群数のサンゴの産卵日と潮の流れや風、台風の進路等による影響と考える。

➢スポットチェック法の評価によると、「回復傾向にあることが多い」とは言えない
 モニタリングサイト1000(サンゴ礁調査)スポットチェック法によるサンゴ礁調査マニュアル第5版(以下「スポットチェック法」とする。)によると、「稚サンゴの加入度により群集回復の予測が可能であり、10個/㎡以上(加入が多そうな3箇所選ぶ)の加入があれば、回復傾向にあることが多い」に従い、稚サンゴ調査の結果を評価すると、「回復傾向にあることが多い」とは言えない。また、ミドリイシ属の全サンゴ(稚サンゴ含む)の生息数をみても0.13個/㎡であった。

■サンゴ齢と構成

➢3歳33%と4歳25%で6割弱を占めた
 サンゴの分布や出現率等から、暫定的に上記の表のようにサンゴの年齢を区分する。この区分を基に稚サンゴ調査で計測したサンゴの長径サイズ値から年齢別に図に示した。3歳(2020年に新規加入したサンゴと推測。)のサンゴが最も多く64個で全体の33%、以下多い順番に4歳(2019年に新規加入。)48個25%、2歳35個18%、5歳21個11%、10%未満は1歳と6歳であった。

■大型卓状ミドリイシ属の評価

➢回復期は前期、おおよその年齢は5から10年
 稚サンゴ調査より大型卓状ミドリイシ属であるクシハダミドリイシとミドリイシの長径上位5群体(46cm,42,41,39,34)の平均値は40.4cmである。スポットチェック法の評価によると、回復期は「前期」、おおよその年齢は「5-10」となっている。

■ミドリイシ属のサンゴ被度と評価

➢サンゴ被度は極めて不良
 稚サンゴ調査よりミドリイシ属のサンゴの面積は、沖島西合計で2.7㎡、調査面積の0.5%にあたる。同様に四双島合計0.9㎡は0.2%、円月島合計1.1㎡は0.2%である。いずれも、スポットチェック法の評価である「被度によるサンゴ礁状態の評価目安」は「0%以上から10%未満」に該当し「極めて不良」である。また、長径からは正確な面積がでないとの懸念もあるのでアメリカ国立衛生研究所が開発したImageJを用い写真画像を解析し求めた標本の面積を勘案したが解析するまでもなく同様の結果であった。

■サンゴ白化の評価

➢白化死は極少なく問題ではない
 稚サンゴ調査の中で特に懸念される白化死の割合は、円月島合計の群体数割合では2%(1群体)であり、周囲にレイシ貝類が多く確認されることよりレイシ貝類による食害死と推測するが、取り立てて問題とはならない結果である。また、沖島西と四双島では白化死は確認されなかった。

➢3地点の軽度白化は19%と多いが大きな問題ではない
 沖島西19%(18群体)、四双島16%(8群体)、円月島で20%(10群体)であった。軽度白化の主要因は30℃近い高水温によるものと断定するが、サンゴの色が褐色から薄い色に変色している程度で、純白までにはなっておらず、この程度の白化であれば大きな問題ではない。 スポットチェック法では白化の多寡について具体的な評価はされていないが、優良なサンゴ群集に比べ、回復途中の群集は群体の総数が歴然に少なく、少しの白化でも群集全体に大きく影響することを考えると要注意である。

 


 

2018年~2015年 <田辺白浜海域公園地区> 

本調査は環境省近畿地方環境事務所「マリンワーカー事業吉野熊野国立公園田辺・白浜沿岸オニヒトデ等調査駆除業務」並びに独自調査により実施。

 


🔲 田辺白浜海域のサンゴ・オニヒトデ生息状況の推移2018年

2018年低水温ショックとは?

 サンゴの耐低水温限界は一般的に15℃。2018年1月上旬~3月上旬の田辺白浜沿岸域の海水温は15℃を下回り、2か月間低水温を継続した。この低水温の長期化により、当該海域のサンゴ群集は壊滅的被害を受けた。これを「2018年低水温ショック」と表現(当会の造語)しています。詳しくは、2018年低水温ショックを参照下さい。

サンゴ群集は壊滅

・沖島は2005年に黒潮大蛇行による低水温で水深3m以浅のサンゴが半減した。 水深7~10mのサンゴへの影響は軽微であった。 その後、サンゴは回復し高被度で推移したが、2018年低水温ショックによりサンゴ被度は1%未満になった。
・四双島は2009年のオニヒトデ大発生により急速に減少推移し、2018年低水温ショックにより1%未満になった。
・円月島、天神崎西島の高被度サンゴ群集も四双島同様オニヒトデ食害により急速に減少し、2018年低水温ショックにより1%未満になった。
・権現崎の高被度サンゴ群集は2018年低水温ショックにより1%未満になった。
・天神崎丸山はオニヒトデの食害を受けず推移し、2018年低水温ショックにより90%以上白化したが、同年には回復しサンゴの減少は僅かとなった。他海域ではミドリイシ属の生残を確認すること自体難しい中、天神崎丸山のエダミドリイシだけが生き残った。

  


🔲 サンゴ群集の被害状況(オニヒトデ食害)2017年

オニヒトデ食害による死サンゴ10%前後

   


🔲 サンゴ群集の重点海域モニタリング2017年

重点海域にも迫るオニヒトデ 

 田辺白浜海域公園地区のサンゴ群集として重要(広さ・多種類・多様性)な6地点を選定しモニタリング調査を開始した。この海域にもオニヒトデの食害による死サンゴが確認された。特に白浜のランドマークである「円月島」や「白良浜」の沖500mの権現崎、日本初のナショナルトラストの地である天神崎の沖500mの「天神崎西島」等にオニヒトデの食害による死サンゴを確認した。

2015年9月 田辺白浜海域公園地区指定 環境省 

 和歌山県立自然公園であった「田辺南部白浜海岸県立自然公園」は、2015年9月に「吉野熊野国立公園」に編入され、「田辺白浜海域公園地区」に指定された。これにともない、田辺市に「田辺自然保護官(現在の管理官)事務所」が開設された。今後は継続的な保全等の支援に期待する。

世界北限域の大サンゴ群集は見過ごされてきた…

 世界北限域のサンゴ群集として、田辺白浜沿岸域に生息する大サンゴ群集は、行政等による継続的な保全は行われておらず、当会のみが細々と調査・保全を継続してきた。

 


 

2014年~2011年 <田辺白浜海域> 


🔲 田辺白浜海域のサンゴ・オニヒトデ生息状況の推移

オニヒトデがサンゴ食いつくす 四双島

 オニヒトデ発生直後の2008年の四双島のサンゴ被度は65%、2014年には13%になり8割減少した。

駆除縮小するとオニヒトデ増加、サンゴは減少続ける

 2009年、1haあたり531個あったオニヒトデは、駆除効果により6分の1の87個まで減少したが、駆除を縮小すると徐々に増加した。その間、サンゴは確実に減少の一途をたどった。

オニヒトデ駆除で資金枯渇、活動停止

 2008年に四双島周辺に大発生したオニヒトデ食害により、田辺市・白浜町の沿岸海域のサンゴ群集は壊滅的な被害を受け続けた。 その間、和歌山県や田辺市、みなべ町等の行政、新聞・テレビ・雑誌等にオニヒトデによるサンゴ食害問題を訴え続けたが、支援(活動資金等)は得られなかった。 民間の助成金(単年度1回限り)と自己資金により、オニヒトデの駆除を2011年まで継続したが、資金に底が付き、駆除活動は縮小・停止せざるえなくなった。オニヒトデについては「オニヒトデ調査・除去(駆除)を参照下さい。

 


 

2010年~2007年 四双島・沖島周辺<田辺白浜海域> 

 本調査事業は以下の助成金等の部分的活用、並びに独自調査により実施。 ・環境保全プロジェクト助成「日本最北限サンゴ群集保全プロジェクト」財団法人損保ジャパン環境財団 ・環境支援基金「日本最北限サンゴ群集保全プロジェクト」特定非営利活動法人夢&環境支援基金 ・和歌山地域貢献活動応援基金「日本最北限サンゴ群集保全プロジェクト」“わかやまいきいきファンド”花王ハートポケット倶楽部地域助成 ・セブン-イレブンみどりの基金「日本最北限サンゴ群集保全プロジェクト」

 

 この調査事業により、和歌山県田辺市田辺湾口の沖島周辺と白浜町沿岸の四双島サンゴ群集の広さ・サンゴ被度が明らかになった。


🔲 沖島周辺・四双島サンゴ分布

四双島サンゴ分布➡ 被度50%以上が2ha、サンゴ域10ha

●サンゴ被度50%以上の面積 約2ha
●サンゴ被度30%~49%の面積 約2ha
●サンゴ被度10%~29%の面積 約2ha
●サンゴ被度9%以下の面積 約4ha
●四双島全長(南北)500m
●サンゴ域全面積 700m×150m=約10ha
●サンゴ種 ニホンミドリイシ・エンタクミドリイシ・ミドリイシ・クシハダミドリイシが優占しキクメイシ類も多い
●推測サンゴ種 79種類程度(日本の造礁サンゴ類:西平守孝氏・J.E.N.Veron氏著より)

沖島サンゴ分布➡ 被度75%以上3ha、50%以上6ha、サンゴ域100ha以上

●サンゴ被度75%を超える面積 3ha以上
●サンゴ被度50%を超える面積 6ha
●サンゴ域全面積 1000m×1000m=約100ha
●サンゴ種 エンタクミドリイシ・ニホンミドリイシ・クシハダミドリイシ・ミドリイシが優占し45種類確認
●推測サンゴ種 79種類程度(日本の造礁サンゴ類:西平守孝氏・J.E.N.Veron氏著より)


🔲 沖島周辺・四双島の高被度サンゴ群集

2006年~2004年サンゴ分布調査<田辺湾口「沖島」周辺海域> 

 本調査事業は、和歌山県委託事業である「2004年度NPOからのふるさとづくり(ニシザキサンゴとその周辺のサンゴ群落分布調査及びサンゴ食巻貝駆除)」、「2005年度わかやまNPO協働モデル事業(ニシザキサンゴとその周辺のサンゴ群落基礎調査および紀州灘ネットワークの呼びかけ)」並びに独自調査により実施。

 

 この調査事業により、和歌山県田辺市田辺湾口に位置する沖島周辺のサンゴ群集の広さ・サンゴ被度・サンゴ種等が初めて明らかになりました。世界北限のサンゴ群集である串本より、さらに北西50kmに位置する大サンゴ群集「沖島」を報告。


🔲 沖島周辺サンゴ分布と水中マップ(コドラート枠設置地点)

ニシザキサンゴの広さは0.5ha以上で高被度、サンゴは45種類

「ニシザキサンゴ(ダイビングポイント名)」は和歌山県田辺市3km沖の「沖島」西側海域に位置(33°43’08.2″N 135°19’27.4″E)し、水深2m~10mに生息するサンゴ群集。 岩の表面をサンゴ群体が占める割合は、75%以上の高被度であり、その広さは0.5ha(1ヘクタール100m×100m)以上。クシハダミドリイシ、エンタクミドリイシ、ニホンミドリシ、ミドリイシの4種のミドリイシ属サンゴ※1が優占する。また、確認したサンゴは45種類であった。

ニシザキサンゴ周辺は6ha以上で中被度

「ニシザキサンゴ」周辺の西側から北側にかけて、約1km四方(水深2m~10m)で造礁性サンゴが生息し、被度50%以上(中被度)は6ha以上であることが明らかとなった。

沖島周辺のサンゴ群集は100ha以上

2006年に追加の調査を実施、さらに地元ダイビング事業体や漁師のヒヤリング結果より、沖島とその周辺海域の100ha(1km四方)全域にサンゴが分布していることが明らかになった。

※1ミドリイシ属サンゴは、褐虫藻を共生させ、光合成による養分を得るため成長が速く、サンゴ礁の基礎を造る造礁性サンゴの種類であり大変重要。

 


🔲 コドラート枠内(1m×1m)


🔲 コドラート枠外 


🔲 サンゴ種 45種類確認

沖島<ニシザキサンゴ群集>サンゴ種 2005年調査

連番 学名  日本名  属  科
1 Montipora turgescens アバタコモンサンゴ コモンサンゴ ミドリイシ
2 Leptoseris mycentoseroides アバタセンベイサンゴ センベイサンゴ ヒラフキサンゴ
3 Acanthastrea amakusensis アマクサオオトゲキクメイシ オオトゲキクメイシ オオトゲサンゴ
4 Psammocora profundacella アミメサンゴ アミメサンゴ ヤスリサンゴ
5 Goniastrea australiensis ウネカメノコキクメイシ コカメノコキクメイシ キクメイシ
6 Acropora solitaryensis エンタクミドリイシ ミドリイシ ミドリイシ
7 Favites flexuosa オオカメノコキクメイシ カメノコキクメイシ キクメイシ
8 Turbinaria peltata オオスリバチサンゴ スリバチサンゴ キサンゴ
9 Catalaphyllia jardinei オオナガレハナサンゴ オオナガレハナサンゴ チョウジガイ
10 Acropora gemmifera オヤユビミドリイシ ミドリイシ ミドリイシ
11 Acanthastrea lordhowensis カクオオトゲキクメイシ オオトゲキクメイシ オオトゲサンゴ
12 Favia speciosa キクメイシ キクメイシ キクメイシ
13 Echinophyllia aspera キッカサンゴ キッカサンゴ ウミバラ
14 Acropora hyacinthus クシハダミドリイシ ミドリイシ ミドリイシ
15 Acropora willisae コシバミドリイシ ミドリイシ ミドリイシ
16 Plesiastrea versipora コマルキクメイシ コマルキクメイシ キクメイシ
17 Montipora venosa コモンサンゴ コモンサンゴ ミドリイシ
18 Acropora digitifera コユビミドリイシ ミドリイシ ミドリイシ
19 Pavona decussata シコロサンゴ シコロサンゴ ヒラフキサンゴ
20 Favia favus スボミキクメイシ キクメイシ キクメイシ
21 Montastrea valenciennesi タカクキクメイシ マルキクメイシ キクメイシ
22 Caulastrea tumida タバネサンゴ タバネサンゴ キクメイシ
23 Hydnophora exesa トゲイボサンゴ イボサンゴ サザナミサンゴ
24 Cyphastrea microphthalma トゲキクメイシ トゲキクメイシ キクメイシ
25 Leptastrea pruinosa トゲルリサンゴ ルリサンゴ キクメイシ
26 Euphyllia ancora ナガレハナサンゴ ナガレハナサンゴ チョウジガイ
27 Acropora japonica ニホンミドリイシ ミドリイシ ミドリイシ
28 Symphylliavalenciennesii ハナガタサンゴ ダイノウサンゴ オオトゲサンゴ
29 Pocillopora damicornis ハナヤサイサンゴ ハナヤサイサンゴ ハナヤサイサンゴ
30 Porites australiensis ハマサンゴ ハマサンゴ ハマサンゴ
31 Goniastrea aspera パリカメノコキクメイシ コカメノコキクメイシ キクメイシ
32 Goniastrea favulu ヒメウネカメノコキクメイシ コカメノコキクメイシ キクメイシ
33 Acanthastrea echinata ヒメオオトゲキクメイシ オオトゲキクメイシ オオトゲサンゴ
34 Echinophyllia echinata ヒラキッカサンゴ キッカサンゴ ウミバラ
35 Cyphastrea serailia フカトゲキクメイシ トゲキクメイシ キクメイシ
36 Porites heronensis フタマタハマサンゴ ハマサンゴ ハマサンゴ
37 Psammocorasuperficialis ベルベットサンゴ アミメサンゴ ヤスリサンゴ
38 Acropora valida ホソエダミドリイシ ミドリイシ ミドリイシ
39 Montastrea curta マルキクメイシ マルキクメイシ キクメイシ
40 Goniastrea deformis ミダレカメノコキクメイシ コカメノコキクメイシ キクメイシ
41 Platygyra contorta ミダレノウサンゴ ノウサンゴ キクメイシ
42 Stylocoeniellaguentheri ムカシサンゴ ムカシサンゴ ムカシサンゴ
43 Montipora mollis   モリスコモンサンゴ コモンサンゴ ミドリイシ
44 Coscinaraea columna ヤスリサンゴ ヤスリサンゴ ヤスリサンゴ
45 Coscinaraea crassa   ヤスリサンゴ ヤスリサンゴ


🔲 サンゴ以外

 


 

和歌山県「田辺・白浜・みなべ」沿岸域の
サンゴ群集の特徴とは?

・世界北限のサンゴ群集と言われる串本(ラムサール条約登録)より、さらに北西50kmに位置している

・サンゴは高い密度(高被度)で広範囲に生息し、サンゴの種類も多い

・未だ未調査のサンゴ群集が数多く存在する

・地域の漁師さんや一部のダイバーにしか知られていない

被度別サンゴ群集面積(県別本土海域)

被度別サンゴ群集面積(県別本土海域)
 1994年データ↓ 100%~75% 75%~50%
 静岡 0.5 0
 高知県 11.9 12.1
 愛媛県 062.2 
 大分県 051.5 
 宮崎県 0 14.6
 鹿児島県 0 2.5
和歌山県  16.840.1 
沖島サンゴ群集(2010年調査)36 
 四双島サンゴ群集(2010年調査) 02 
第4回自然環境保全基礎調査(1994年3月環境庁発表)より引用 単位:ha

※沖島サンゴ群集:2004~05年当会の調査で初めて明らかになったサンゴ分布+2010年暫定調査補正結果、未だ未調査海域が多く残る

※四双島サンゴ群集:2010年当会の暫定的な調査で初めて明らかになったサンゴ分布

沖島及び四双島サンゴ群集は、第4回自然環境保全基礎調査(1994年3月環境庁発表)では調査されていない 

和歌山県市町村別サンゴ平均被度

 和歌山県市町村 サンゴ被度%
 みなべ 7.4
 田辺 26
 白浜 3.9
 すさみ 0.6
 串本25.4

平成22年度和歌山県サンゴ分布状況調査報告書2010年12月串本海中公園センターより引用

※田辺には沖ノ島の大サンゴ群集が含まれている

和歌山県サンゴ群集の評価(抜粋)

  田辺
 白浜
四双島
 串本
双島
 総合評価
 陸上景観
 海中景観
サンゴ類 
 無脊椎動物
海藻類 
魚類
6項目平均点2.72.52.8
重要な特性 

平成22年度和歌山県サンゴ分布状況調査報告書2010年12月串本海中公園センターより引用

 △: あまり優れていない、もしくはあまり重要でない  1点
 ○: やや優れている、もしくはやや重要  2点
 ◎: 特に優れている、もしくは特に重要  3点

サンゴ生息域は、「海中の熱帯雨林」

 サンゴ生息域は、「海中の熱帯雨林」とよばれるほど豊かな「生物の多様性」を持っており、海洋環境に重要な役割を果たしています。近年わが国におけるサンゴ群集は、白化現象、サンゴを食するオニヒトデや巻貝の大量発生、人の諸活動による水質・底質の悪化など様々な危機にさらされています。

和歌山県沿岸に生息するサンゴ群集も例外ではありません。・・・(続きを読む)

 当NPOでは、和歌山県田辺湾の沖島周辺のサンゴ群集や白浜町沿岸域及び四双島や円月島、権現崎のサンゴ群集に注目してきました。

 これら海域には、サンゴが高い密度で広範囲に生息し、地元漁師さんや一部のダイバーにしか知られていません。また、未調査のサンゴ群も数多く存在する海域です。

 この地域のサンゴ群集を、

①調査し科学的なデータを蓄積する

②モニタリングによりその変化を捉え保全に繋げる

③教育の場として体験学習や実習を通し、サンゴの大切さや環境保全などへの理解を深める

事業として活動しています。

 


経緯

 高緯度のサンゴ群集として名だたる和歌山県串本町沿岸(ラムサール条約登録地)や、沖縄のサンゴ礁では、環境省事業等による様々な保全活動の取り組みがなされてきましたが、和歌山県沿岸域のうち串本を除く高緯度(例えば、白浜・田辺・みなべなど)に生息するサンゴ群集に関して何ら取り組みがなされていません。

 当会では、『沖ノ島』・・・(続きを読む)

 当会では、『沖ノ島』(和歌山県田辺市・みなべ町・白浜の沖約3kmに位置)、及び、『四双島(シソウジマ)』(和歌山県白浜町の沖約1kmに位置)に生息するサンゴ群集は串本に匹敵することに注目してきました。 この『沖ノ島』、『四双島』とその周辺海域は、サンゴが密集して生息しており、イセエビや温帯系の魚種も多く、さらにサンゴ群集を餌場や住居とする熱帯系の魚も多く生息し、ダイバーやスノーケラー、海水浴客、釣り客などマリンレジャーを楽しむ重要な海域となっています。 

 ここでも、他のサンゴ海域同様、サンゴを食する巻貝やオニヒトデの発生などの問題を抱えています。 しかしながら、サンゴ群集の分布や被害実態の把握はされておらず、サンゴ群集の基礎調査、被害調査、オニヒトデやサンゴを食する巻貝の駆除対策など具体的、効果的な対策が急務と考えます。

 2006年頃より白浜『四双島』とその周辺海域にオニヒトデが目撃されるようになり、2008年に入って異常発生とも考えられる数のオニヒトデが確認されました。

 白浜町は温泉地として有名であり、国内でも有数のマリンレジャーの拠点となっており、2007年の総観光客数は3336千人、その内マリンレジャーを目的に訪れる観光客は704千人にも及びます。これだけ多くの観光客が利用し楽しむサンゴ群集に対してなんら対策を講じずこのまま放置しておくと、長い年月をかけて育ったサンゴ群集を短期間で失う可能性があります。

 当会は2009年6月より本格的に『四双島』におけるオニヒトデの食害状況を調査開始しました。その結果、『四双島』周辺のサンゴ群集はオニヒトデの異常発生が確認され、このまま何も対策を講じず放置しておくと2~3年後には全滅に近く激減すると推測しました。さらに『四双島』より北3kmに位置する『沖ノ島』においても同様のオニヒトデによる食害増加の傾向が見受けられ、過去の事例・経験から推測するに、数年後には現在の『四双島』と同様な状況になる可能性があると危惧します。

 これら高緯度のサンゴ群集は、和歌山県の重要な資源であり、人類共通の財産である「生物の多様性」の際たるものであることを認識し、これらがもたらす恵沢を将来にわたり享受できるよう次の世代に引き継いでいくことが、我々国民に託された重要な課題であり責務と考えます。

 2009年4月より20ヶ月間の保全により『四双島』最重要区域のオニヒトデは、最盛期の1ヘクタール531個から、その6分の1である87個まで減少し生息数調整(駆除)の効果は確認できたましたが、その後も生息域を広げています。

 今後も注意深くサンゴ群の調査を実施し保全活動を継続する必要があると考えます。

 

サンゴ群集の価値とは?

・海中の熱帯雨林と称され生物多様性が高い

・魚や水中生物の住み家・エサを提供する

・海洋生物25%、魚類33%がサンゴ礁に関って生きている

サンゴ礁は全世界の海底総面積の・・・(続きを読む)

・サンゴ礁は全世界の海底総面積の0.1%、海洋生物への影響が大きい

・観光資源(サンゴ礁の海)として、全世界の働き口の10%を支えている

・サンゴ礁は海岸線の防波堤を担っている

・医学的に有効な化学物質を産出する可能性が高い
  藻類→ガン治療薬、 イモ貝類→鎮痛剤
  新薬発見の可能性→陸上生態系の400倍

・海水中へのCO2取り込みは38兆トン(大気中CO2の52倍)

・サンゴ褐虫藻→光合成(CO2取込)→サンゴ骨格(石灰化)
海中生態系バランスが崩れると海中へのCO2取り込みに異変が起こる可能性がある

 

なぜ、今、サンゴ群集の保全が必要なのか?

□全世界では、(科学者は警鐘を鳴らす)
・サンゴ礁の半分が重大な危機 →今後40年で消滅の可能性
・今後25年以内 →世界のサンゴ礁の半分以上はなくなる可能性

□沖縄では、
・1998年:海水温上昇(30℃以上)よりサンゴの白化
   →本島壊滅状態 →オニヒトデ大発生・巻貝食害 
・06年ホワイトシンドローム →07年サンゴの白化 →08年オニヒトデ歴史的大発生
現在まで、海水温上昇による白化、オニヒトデ異常発生が繰り返えされている

□和歌山県「串本」では、
・98年巻貝食害よりサンゴ壊滅の危惧 →駆除活動→継続中 
・04年秋オニヒトデ大発生→駆除活動効果あり→今でも駆除継続中

□和歌山県「田辺・白浜・みなべ」では、
・08年白浜四双島にオニヒトデ大発生
  →09~11年当会の駆除活動によりある程度沈静化(効果あり)




 


サンゴ群集モニタリング調査員募集

当NPOでは、和歌山県田辺湾の沖島周辺のサンゴ群集や白浜町沿岸域及び四双島や円月島、権現崎のサンゴ群集に注目してきました。
これら海域には、サンゴが高い密度で広範囲に生息し、地元漁師さんや一部のダイバーにしか知られていません。また、未調査のサンゴ群も数多く存在する海域です。
この地域のサンゴ群集を、
①調査し科学的なデータを蓄積する
②モニタリングによりその変化を捉え保全に繋げる
③教育の場として体験学習や実習を通し、サンゴの大切さや環境保全などへの理解を深める
事業として活動しています。

 


令和7年度の公示調査

令和7年度の公示調査は6月頃に更新致します。

(1) 水温状況調査 

(2) 重点海域調査

(3) サンゴ再生状況調査

※上記調査には参加条件(例えば潜水士免許・調査経験など)あります。詳しくは「お問い合わせフォーム」よりお問合せ下さい。

基本スケジュール

8:00集合 現地ダイビングサービス(田辺市内・白浜町内)

8:15~調査担当確認
9:00~準備、ボート乗船
9:30 出港
10:00 調査ダイブ
11:00 調査終了、ライン回収、データシート点検、GPS測定
11:30 港着
  昼食
13:30 出港
14:00 調査ダイブ
15:00 調査終了、ライン回収、データシート点検、GPS測定
15:30 港着~機材片付け
16:00 データ集計
17:00 修了

※海象等によりスケジュールは変動します。

 

準備するもの

・遊びのダイビングと同様の準備をして下さい。水着、着替え、器材等です。

・ダイビング器材のレンタル(有料)もございます。お申込み時にご要望下さい。

・調査器材は当会で準備致します。

参加資格と費用

★令和7年度は、調査経験者のみとし、未経験者は参加できません。ご了承下さい。

1.調査未経験者は、

 ・・・(続きを読む)

(1)レクチャ受講(プレ調査ダイブと同日に実施)
・レクチャは30分程度実施します。 
・魚類や海洋生物の図鑑等持っている方は持参下さい。 

(2)プレ調査ダイブ(実習1ビーチダイブ)への参加
・プレ調査ダイブは、サンゴ群集に実際に潜り、調査の実習を実施します。
・同日に(1)項のレクチャも実施します。 

☆プレ調査ダイブ参加費用:12,000円(税込、器材・個人的経費等含まない)
・午前9:30集合~12:00 ・午後13:00集合~15:30 

 ※3名様参加より調整します。 
 

 

2.ダイビング経験(下記事項の全てに該当する方)
・潜水士資格保有者 ・アドバンスCカード以上の保持者 ・50ボートダイブ以上の経験 ・健康な方 ・オウンリスクで参加できる方 ※自分で潜れない方は参加できません。

3.調査一般参加費用:通常の遊びの2ボートダイビング費用程度
・費用に含むもの(乗船料2回、タンク2本、調査道具1式)
・費用に含まれないもの(上記以の個人的な経費で飲食代、交通費、宿泊費、器材等)

※参加申し込みは「お問い合わせフォーム」から送信下さい。