和歌山県田辺市田辺湾「沖島」水温計設置 filmed 2021.6 <吉野熊野国立公園田辺白浜海域公園地区>


 海水温変動調査風景<田辺白浜海域公園地区>

海水温変動調査Report<田辺白浜海域公園地区>

 水温計測調査は環境省近畿地方環境事務所「マリンワーカー事業吉野熊野国立公園田辺湾周辺海域における造礁サンゴ群集保全に向けた調査等業務」並びに独自調査により実施しました。

2024年<田辺白浜海域水温変動> 


 

■低水温によるサンゴ群集への影響
 サンゴの白化やへい死につながる15℃未満の低水温について、2024年1月から3月に注目し、水温状況がおよぼすサンゴ群集への影響について以下に記す。  
① 天神崎丸山
➢低水温によるサンゴ群集への影響は軽微

 1日の平均水温が15℃未満の日を合計すると26日であった。2018年の低水温ショックにより、ミドリイシ属の生残の確認自体が難しい中、天神崎丸山の優占種であるエダミドリイシの9割が白化したが、へい死には至らず回復した経緯がある。このサンゴだけが生残し、かつ群集を維持できたのは、他のミドリイシ類よりも低水温に強いサンゴ種であることは過年度に報告した。このことより、天神崎丸山において、低水温によるサンゴ群集への影響は軽微であったと推測する。ただし、エダミドリイシ以外のミドリイシ類等に関しては、白化群体が多数存在することから、低水温による影響があったと考える。

② 沖島西・四双島・円月島
➢低水温によるサンゴ群集への過度な影響はなかったと推測
 1日の平均水温が14℃台だった日は、沖島西で5日、四双島で4日、円月島で5日であった。過年度の串本海域の調査報告に照らし合わせて考えると、サンゴへの過度な影響はなかったと推測する。 

 

 


 


 

■高水温によるサンゴ群集への影響

 サンゴの白化やへい死につながる30℃以上の高水温について、7月から9月に注目し、水温状況がおよぼすサンゴ群集への影響について以下に記す。

➢高水温によるサンゴへの影響は軽微

 7月から9月に1日の平均水温が30℃以上になった日は、天神崎丸山で2日のみであった。また、1日の最高水温が30℃以上の日数は天神崎丸山で13日、沖島西と四双島で4日、円月島で2日であった。このことから、高水温によるサンゴへの影響は軽微であったと推測する。

  


2023年<田辺白浜海域水温変動>  


 

■低水温によるサンゴ群集への影響
 サンゴの白化やへい死につながる15℃未満の低水温について、2023年1月から3月に注目し、水温状況がおよぼすサンゴ群集への影響について以下に述べる。
① 天神崎丸山
➢低水温によるサンゴ群集への過度な影響はなかったと推測
 天神崎丸山において、1日の平均水温が14℃台だった日を合計すると7日であった。また、14℃未満の日は存在しなかった。
2018年の低水温ショックにより、ミドリイシ属の生残の確認自体が難しい中、天神崎丸山の優占種であるエダミドリイシの9割が白化したが、へい死には至らず回復した経緯がある。このサンゴだけが生残し、かつ群集を維持できたのは、他のミドリイシ類よりも低水温に強いサンゴ種であることは過年度に報告した。このことより、天神崎丸山において、低水温によるサンゴ群集への過度な影響はなかったと推測する。ただし、エダミドリイシ以外のミドリイシ類等に関しては、白化群体が点在することから低水温が影響したと考える。

② 沖島西・四双島・円月島
➢低水温によるサンゴ群集への過度な影響はなかったと推測
 1日の平均水温が15℃未満だった日は存在しなかった。また、最低水温をみても、円月島で7日、四双島で5日であり、上述した串本海域の調査報告に照らし合わせて考えると、サンゴへの過度な影響はなかったと推測する。

  


 


 

■高水温によるサンゴ群集への影響

 サンゴの白化やへい死につながる30℃以上の高水温について、7月から9月に注目し、水温状況がおよぼすサンゴ群集への影響について以下に述べる。

➢高水温によるサンゴへの影響は軽微

 7月から9月に1日の平均水温が30℃以上になった日は存在しなった。また、1日の最高水温が30℃以上の日数は天神崎丸山でわずか1日のみであった。このことから、高水温によるサンゴへの影響は軽微であったと推測する。

  



 

2022年<田辺白浜海域水温変動>  


■低水温によるサンゴ群集への影響
 サンゴの白化やへい死につながる15℃未満の低水温について、2022年1月から3月に注目し、水温状況がおよぼすサンゴ群集への影響について以下に述べる。
① 天神崎丸山
➢低水温によるサンゴ群集への過度な影響はなかったと推測
 天神崎丸山において、1日の平均水温が14℃台だった日を合計すると13日であった。また、14℃未満の日数は4日であった。2018年の低水温ショックにより、ミドリイシ属の生残の確認自体が難しい中、天神崎丸山の優占種であるエダミドリイシサンゴの9割が白化したが、へい死には至らず回復した経緯がある。このサンゴだけが生残し、かつ群集を維持できたのは、他のミドリイシ類よりも低水温に強いサンゴ種であることは過年度に報告した。このことより、天神崎丸山において、低水温によるサンゴ群集への過度な影響はなかったと推測する。ただし、エダミドリイシサンゴ以外のミドリイシ類に関しては、少しは低水温が影響したと考えられる。

② 沖島西・四双島・円月島
➢低水温によるサンゴ群集への過度な影響はなかったと推測
 1日の平均水温が14℃台だった日を合計すると、円月島では7日、四双島で3日、沖島西で1日であった。また、14℃未満の日数は、沖島西で1日、四双島で1日であった。上述した串本海域の調査報告に照らし合わせて考えると、白化する群体はあったとしても、重度の白化状態やへい死に至るまでのサンゴへの過度な影響はなかったと推測する。

  


 


 

■高水温によるサンゴ群集への影響
 サンゴの白化やへい死につながる30℃以上の高水温について、7月から9月に注目し、水温状況がおよぼすサンゴ群集への影響について以下に述べる。

➢8月中旬に高水温が連続
 1日の平均水温が30℃以上になったのは、沖島西・四双島・円月島の3地点で8月9日であった。その後、30℃未満に水温が下がったのは、沖島西・四双島で8月14日(5日間連続30℃超え)、円月島で8月15日(6日間連続30℃超え)であった。また、天神崎丸山では8月10日に30℃以上となり8月19日(9日間連続30℃超え)に30℃未満に下がった。
 1日の最高水温でみると、30℃以上の日数は、天神崎丸山で12日、次に円月島の9日、沖島西および四双島は8日であった。さらに、1日の最低水温が30℃以上の日数は、天神崎丸山で5日、次に円月島の2日、沖島西の1日であった。8月20日から21日には、いったん1日の平均水温は27℃前後にまで下がった。おそらくは台風8号が紀伊半島をかすめるコースをとったことにより、うねりや波浪、潮流による海水の攪拌が要因と考えられる。その後、再び水温は上昇し、29℃近辺を推移し、安定的に28℃を下回ったのは9月下旬に入ってからであった。

➢詳細調査近辺のサンゴの白化状況
 9月26日から29日に実施した詳細調査において、調査海域近辺のサンゴの白化を確認した。白化の状況としては、色が薄くなったものや純白色の軽度の白化が点在し、中には軟組織が部分的に確認できないような瀕死の状態である重度の白化も確認した。さらに、サンゴの表面にうっすらと藻が生えるミドリイシ類の白化死の群体も存在した。これら白化群体の殆どは調査範囲外であるため正確な数値はつかめていない。本詳細調査は30㎡と狭く限られた範囲の調査であり、今後はもっと広範囲に調査を実施する必要がある。
➢高温ストレスが蓄積して起こる白化現象
 サンゴの白化は高温ストレスが蓄積して起こると考えられており、その指標として、米国大気海洋庁が開発したDegree Heating Week(DHW)が有用とされている。例えば、平年より1℃高い水温が4週間続くとDHWは4となる。平年より2℃高い水温が2週間続いた場合も同様であり、DHWが4を超えると白化現象が起こり、DHWが8を超えると白化現象によるサンゴの大量死が起こると判断する。しかしながら、本海域は高緯度(温帯域)のサンゴ群集であることや、海の濁度なども著しく変化する海域であることなどの観点から、DHWの指標をそのまま閾値とし適用することには懸念が残る。よって、本調査海域で得た水温データのみ使用し、DHWを参考に高温ストレスが蓄積して起こる白化現象を考察することとした。
 過年度の月単位の最も高い平均水温に注目すると、2019年8月の27.4℃、2020年8月の27.5℃、2021年8月の26.6℃であった。この水温データの平均値の27.2℃を平年値とする。この水温は本海域のサンゴが日常的に耐えうる経験的な水温であり、これよりも1℃高い水温の28.2℃が白化のトリガーとなる閾値として考える。
 本年度の4地点の水温平均から28.2℃以上の日を積算すると、37日存在し、DHW5となった。具体的には8月2日に28.2℃以上に上昇し、途中に水温が下がった日もあったが、最終9月18日まで続き、翌日から安定的に水温は下降していった。
29.2℃以上を連続する日だけに注目すると、8月8日から8月18日の11日間連続し、さらに、この期間には30℃をも超える日数が7日あることから、DHW4とする。その後、28.2℃以上を連続する日だけに注目すると、8月30日から9月18日の20日間ほぼ連続し、DHW3となった。以上より、本海域のサンゴ群集は、高温ストレスが蓄積して起こる白化になったと推測するが、大量死に至るまでの状況ではなかったと評価する。

※「7月から9月の水温・気温変動および紀伊半島接近台風」 ※図中の「台風○号・・・」の矢印(➡)は、紀伊半島に最も接近する日の前後4日間程度とした。「台風○号上陸」は、九州や伊豆半島等に上陸したが、紀伊半島を海から直撃するようなコースではなかった。「台風○号接近」は、上陸はしていないが紀伊半島への影響が大きかったと思われる台風。「台風○号」は紀伊半島から遠く、影響は少なかったと思われる。

 


 

2021年<田辺白浜海域水温変動>  


 

■低水温によるサンゴ群集への影響
サンゴの白化やへい死につながる15℃未満の水温について注目し、本年度の水温状況を以下に記す。
 天神崎丸山において、1日の平均水温が14℃台だった日を合計すると、9日あったが、その内連続する期間は12月31日から1月6日までの7日間であった。また、14℃未満の日は存在しなかった。これを串本海域の調査報告に照らし合わせて考えると、サンゴへの大きな影響はなかったと考える。また、最低水温で評価したとしても16日であった。最低水温は1日中連続した温度ではなく、最も低くなった時点の水温を集計しているものであるため、平均水温でサンゴへの影響を判断することが望ましい。また、他の3地点についても15℃未満の水温が長く続いてはいない。以上の水温状況より、本年度は2018年の低水温ショックのようなサンゴへの影響はなかったと判断できる。

  


 


 

■高水温によるサンゴ群集への影響
 一般的に30℃以上の水温が長く続けば、サンゴの白化やへい死につながると考えられている。本年度の水温の状況をみると、1日の平均水温が30℃以上になった日は存在しなかった。また、1日の中での最高水温が30℃以上だった日も同様に存在しなった。このことより、30℃以上の高水温によるサンゴへの影響はなかったと考える。

 


 

2020年<田辺白浜海域水温変動>  


 

■低水温によるサンゴへの影響
 15℃未満の水温が長く続けば、サンゴの白化やへい死につながることから、本年度(2020年1~3月分のデータを含む。以下、水温については同様。)の15℃未満のサンゴにとっての低水温の状況を以下に示す。
 1日の平均水温が15℃未満だった日は、天神崎丸山の1月31日から2月7日の連続する8日間、2月24日、27日の合計10日であった。他の地点では、円月島の2月1日だけであった。次に、1日の中での最低水温が15℃未満だった日は、天神崎丸山で29日間あった。ただ、最低水温は1日中連続した温度ではなく、最も低くなった時点の水温を集計しているものであり、1日中最低水温が続いた訳ではないため、平均水温で影響を判断することが望ましいと考える。 以上の水温状況より、本年度は2018年の低水温ショックのようなサンゴへの影響はなかったと推測する。

  


 


 

■高水温によるサンゴへの影響
 一般的に30℃以上の水温が長く続けば、サンゴの白化やへい死につながると考えられている。本年度の水温の状況をみると、1日の平均水温が30℃以上になった日は存在しなかった。また、1日の中での最高水温が30℃以上だった日は、天神崎丸山で5日、円月島で3日、四双島で2日、沖島西で1日と少なかったことから、30℃以上の高水温によるサンゴへの影響は大きくはなかったと考える。

  


  

2019年<田辺白浜海域水温変動>  


 

■低水温によるサンゴの白化危惧(14℃以下)
 サンゴが白化へい死するような低水温の長期化はなかった。2019年1月から3月の14℃台の水温は、沖島西2日、天神崎丸山20日、四双島6日、円月島6日であった。また、13℃未満は、天神崎丸山の3日のみとなる。2020年1月から2月24日の14℃台の水温は、沖島西0日、天神崎丸山9日、四双島0日、円月島1日であった。また、13℃未満のデータは存在しなかった。これら水温の状況より、低水温によりサンゴが白化し、さらに白化が長引き、へい死に至るまでの水温環境ではなかった。
  


 


 

■高水温によるサンゴの白化危惧(30℃以上)
 2019年に30℃以上になる水温データは存在しなかった。よって、高水温によりサンゴが白化し長引くような水温環境はなかった。

 


 

2018年11月<田辺白浜海域水温変動の計測スタート> ~1019年2月