オオカワリギンチャク

和歌山県田辺市田辺湾ショウガセ礁に生息するオオカワリギンチャク(通称「光るイソギンチャク」)filmed2020 <吉野熊野国立公園ショウガセ海域公園地区>

【オオカワリギンチャクの生息状況】

➢オオカワリギンチャクは希少生物

オオカワリギンチャクは2015年1月に県天然記念物に指定された深海域の希少生物。また、2015年9月には吉野熊野国立公園ショウガセ海域公園地区の保全種に指定された。

オオカワリギンチャクはクラゲの蛍光タンパク質と同類の物質を持ち・・・(続きを読む)

全身が明るい淡黄色のオオカワリギンチャクは、光る花のように触手を広げ、その姿は幻想的で別名「光るイソギンチャク」と呼ばれ、レジャーダイバーの間では人気の希少生物。 

しかも、大きな群生をレジャーダイバー(水深40m限界)が見られるのは、田辺湾の沖3kmに位置するショウガセ(ダイビングポイント名称)だけであり、2004年頃より人気が急上し、全国から「光るイソギンチャク」を見ようとレジャーダイバーが訪れ始めた。

➢ショウガセ礁のオオカワリギンチャク再び激減

 2007年頃よりその生息数は徐々に減少し始め、2013年からは急激な減少となり、2017年5月、石舞台(オオカワリギンチャクが密集する地点の名称)周辺の生息数は2個体になった。

 その後、2019年には未成体(幼体)が増加し始め、2021年まで増加傾向にあったが、2023年度には再び著しい減少を確認した。

オオカワリギンチャク減少の理由は・・・(続きを読む)

減少の理由は、①水温等の環境変化、②レジャーダイバーのフィンキック等によるダメージ説、③成体の高密度化や老化による自然減耗説、④インターネット販売に関わる密漁説、⑤天敵説、⑥漁網によるダメージ説など諸説あるが、どれが有力か思慮する。

ちなみに、白浜町の沖のカスミの根(ダイビングポイント名)に生息するオオカワリギンチャクもショウガセと同様時期に減少し、成体の生残は2019年時点で1個体となった。ショウガセと異なる点としてレジャーダイバーの訪れる数が極少ないのでフィンキック等によるダメージ説は当てはまらない。

 調査風景<ショウガセ海域公園地区>

調査Report(オオカワリギンチャク

2024年度調査結果 ➢ショウガセ礁海域のオオカワリギンチャク絶滅を危惧  

2024年度事業は、公益財団法人公益推進協会「自然公園等保護基金」による助成事業です。

➢石舞台周囲の生息状況 

調査地点2024年度(激減)2021年度
石舞台上部0個66個(8個/㎡)
石舞台周囲16個400個程度
定点観察(1㎡)2個19個

オオカワリギンチャクは2年で著しく減少、本海域の絶滅を危惧 
石舞台の上部・周囲・定点観察の3地点において、オオカワリギンチャクの生息数を21年度と比較すると著しく減少した。特に石舞台周囲の側面や下部に生息していた個体は、2021年度の400個から、2024年度には16個に激減。加えて、幼若体は極少なく、本海域の絶滅を危惧する

2019~21年度調査結果 ➢ショウガセ礁海域のオオカワリギンチャク増加傾向  

2019~21年度 里地・里山環境保全推進事業(和歌山県)の補助金を受け実施しました。

➢オオカワリギンチャク石舞台周囲(全体集計)増加 

調査地点2021年度2020年度2019年度
石舞台上部66個(8個/㎡)41個(5個/㎡)15個(2個/㎡)
石舞台周囲400個程度400個程度400個程度
定点観察(1㎡)19個31個135個

➢オオカワリギンチャク石舞台上部増加

 2019年に確認したオオカワリギンチャクの合計個数は8㎡に15個であり、1㎡あたりの生息数は2個/㎡であった。同様に2020年は41個で5個/㎡、2021年は66個で8個/㎡と増加している。
 また、サイズ別の生息数は1cm未満の個体については2019年の13個から2021年の30個と増加し、2~3cm未満の個体も同様に0個から8個へと増加した。つまり、幼体が増え、さらにその個体が成長している。

➢オオカワリギンチャク定点観察地点の幼若体は成体に成長し定点観察地点外に移動

 2019年の生息数合計は135個であったが、2020年には31個、2021年には19個に減少した。幼体である1cm未満の個数は、2019年に90個、2020年に10個、2021年に1個、同様に1~2cm未満の若体も大きく減少している。しかし、2~3cm未満の成体は明らかに増加している。つまり、幼若体は成体に成長し、定点観察地点外へと移動した。

➢オオカワリギンチャク石舞台周囲は増加傾向 
 石舞台周辺の写真撮影による調査より、2020年の石舞台周辺のオオカワリギンチャクの生息数は400~600個、2021年も同様の生息数であった。以下の「オオカワリギンチャク経年変化」を参照。

➢オオカワリギンチャクは成長過程 
 石舞台でのベルトトランセクト調査より、オオカワリギンチャクの幼若体は明らかに増加傾向にある。1平方メートルあたりの生息数も増加している。特に幼体から成体へと、大きくなっていることが写真から見て取れる。コドラート調査では幼若体が減っているが、石舞台周辺を含めるとむしろ増加傾向にある。

➢オオカワリギンチャク再生と成長 
 2017年5月の視察結果では、石舞台周辺の岩場に成体は2個体しか見つからなかったことからすると、消滅近くまで減少したが、2019年の調査から明らかなように小型の個体が急に増加し、石舞台の周辺に生息している。1cm未満の極小さな個体は岩の下方や窪みに密集し、成長するにつれ、岩の側面や上部に移動しているように視える。体が大きくなるにつれ多くの餌が必要となり、岩の上方に移動し上から降ってくる或いは潮流で流れてくるプランクトンを触手で捕食するためと推測する。健全なころのオオカワリギンチャクの成体は、石舞台の上部(周囲より一段高くなっている)に集まっていた。おそらく餌の捕食に利点があると考える。今後、幼体である1cm前後のオオカワリギンチャクが成長するにつれ、石舞台の上部に集まり、成体として密集するようになれば、明らかに回復したと言えるだろう。

➢過年度のオオカワリギンチャクの減少をふり返る 
 クラゲの蛍光タンパク質と同類の物質を持ち、全身が明るい淡黄色のオオカワリギンチャクは、光る花のように触手を広げ、その姿は幻想的で別名「光るイソギンチャク」と呼ばれ、レジャーダイバーの間では人気の希少生物である。しかも、大きな群生をレジャーダイバーが見られるのは、田辺湾の沖3kmに位置するショウガセ(ダイビングポイント名称)だけであり、2004年頃より人気に火が付き、全国から「光るイソギンチャク」を見ようとレジャーダイバーが訪れ始めた。2007年頃よりその生息数は徐々に減少し始め、2013年からは急激な減少となった。減少の理由は、①水温等の環境変化、②レジャーダイバーのフィンキック等によるダメージ説、③成体の高密度化や老化による自然減耗説、④インターネット販売に関わる密漁説、⑤天敵説、⑥漁網によるダメージ説など、諸説あるがどれが有力か思慮する。ちなみに、白浜町の沖のカスミの根(ダイビングポイント名)に生息するオオカワリギンチャクもショウガセと同様に激減し、成体の生残は2019年時点で1個体となった。ショウガセと異なる点としてレジャーダイバーの訪れる数が1年に数回と極少ないのでフィンキック等によるダメージ説は当てはまらない。

オオカワリギンチャク経年変化<2003年~2024年>  

➢オオカワリギンチャク経年変化<2003年~2024年>

調査Report(タコアシサンゴ

2019~21年度調査結果 ➢ショウガセ礁海域のウチウラタコアシサンゴ生息状況  

2019~21年度 里地・里山環境保全推進事業(和歌山県)の補助金を受け実施しました。

➢ウチウラタコアシサンゴ生息調査

 

ショウガセ礁海域のウチウラタコアシサンゴ生息数推定49個

 生息可能予想面積は、水深30m以深の5m幅(調査時の幅)を対象とし、調査長を乗じた値とした。調査長は西側と東側で各100m、北側で70mとした。上記の生息予想可能面積に調査で得た1㎡あたりの生息個数を乗じ生息予想数を算出した。限られた調査結果よりショウガセ全域に生息するウチウラタコアシサンゴは49個程度と予想する。

 餌となるプランクトン数など、生育範囲が広くなると環境が大きく異なるため均一には分散していないと考え、暫定値とするが、当該地域のダイビング事業者にヒヤリングすると、ショウガセ全体で30~40個程度との回答があり、本調査での予想生息数よりも少ない。また、東側に生息数が少ないのは、餌となるプランクトンが少ない理由によると思われる。プランクトンは潮流により運ばれてくるが、東側にはショウガセと同様の岩礁が直立し潮流を直接受けられていない。また、経験的にショウガセは北から西側に潮流があたることが多いと思われる。よって、餌となるプランクトンが少なく生育数も少ないと思われる。

➢ウチウラタコアシサンゴの生態と規制 
 環境省海洋生物レッドリスト(情報不足(DD)1種)に選定されているウチウラタコアシサンゴ(Rhizotrochus typus)はイシサンゴ類等の造礁性サンゴとは異なり、大きなポリプ1つからなる単体性の大型で色彩の美しい非造礁性サンゴ。国内最大の群生地は和歌山県みなべ町沖のショウガセであり、他に相模湾・駿河湾~和歌山県沿岸・四国・九州沿岸・小笠原諸島に分布する。
 生息する環境条件は30m以深。通常は水深20m以浅には出現せず、ダイビング限界水深の40~50mでの観察例が多く、さらに深い水深からドレッジ等で採集された事例も知られる。

 環境耐性に関する特段の情報はないが、本種はアクアリストに人気が高く採取圧を懸念してレッドリストに掲載された。また、本種が生息するショウガセ海域公園地区では捕獲等規制動植物としてタコアシサンゴとオオカワリギンチャクが指定されている。
 本種は造礁性サンゴの様な褐虫藻を体内に持っていないため、流れてくるプランクトンを触手でとらえ中央にある大きな口へ運んで食べる。そのためポリプを開き長い触手を広げるとまるで大きなイソギンチャクのようである。


生物多様性深海域調査員募集

オオカワリギンチャク

・生物多様性深海域調査はレジャーダイバーが潜ることができる最大水深40m以浅の海域を調査します。 

参加を希望するかたは以下の案内をご覧ください。

 


令和7年度の調査日程

令和7年度の公示調査 6月頃に更新します。

(1)生物多様性調査

・ショウガセ礁海域

※調査には参加条件(例えば潜水士免許・DeepDiveの調査経験など)あります。詳しくは「お問い合わせフォーム」よりお問合せ下さい。

基本スケジュール(海象等により出船時間等が変更になる場合があります)

基本スケジュールA

8:30集合 現地ダイビングサービス(田辺市内・白浜町内)

8:30 調査担当確認、器材等準備、ボート乗船
10:00 出船 調査ダイブ1
11:30 帰港
  昼食等(自分でご用意下さい)
13:00 出船 調査ダイブ2
14:30 帰港、調査データシート回収、器材洗浄、シャワー等
15:00 調査ヒヤリング、データ発表等
16:30 修了・解散

 

準備するもの

・遊びのダイビングと同様の準備をして下さい。水着、着替え、器材等です。

・ダイビング器材のレンタル(有料)もございます。お申込み時にご要望下さい。

・調査で使用する器材は、弊社で準備致します。

参加資格と費用

★令和7年度は調査経験者のみとし、未経験者は参加できません。ご了承下さい。

1.ダイビング経験(下記事項に全てに該当する方)
・潜水士資格保有者 ・ダイブマスター以上の資格保持者 ・潜水調査経験者 ・健康な方 ・オウンリスクで参加できる方(保険等はご自身でかけて下さい)

2.調査一般参加費用:通常の遊びのダイビング費用程度

※参加申し込みは「お問い合わせフォーム」から送信下さい。